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お題「最弱の地獄」(即興小説トレーニング)

この頭の中の露呈をするならば手段はざくろのように脳漿をぶちまけてアスファルトと白日のもとに晒してそういう処刑の仕方が一番望ましい.しんみりと夜の降りた街を見下ろしているもうおきまりのシチュエーションで詰まりすぎてしまった喉から最後の息を吐き出すようにしてゆっくりと,

ーーーー説明を省くに十分なくらい一般化されてしまった光景にたどり着いた.最適解ではないけれど行き着かざるをえなかったというか,その,積極的に死のうとはしなかったけれど消極的に生きてきたように思うけれど,それはもう川の小石が積まれるところの決まっているように,自明な今の立っている場所.脆弱でブレブレのポリシーは,幾度となく折れた.ただ抵抗してこなかったというだけで何度も折られたし修復もする気もなかった.ダメージに向き合うだけの気概もなかった.与えれた命は与えられたものだろうか.自動的に生きてる化学反応の集合である僕はいつのまにか打ちのめされて,逃げるだけの自愛もなくって,だから何かの閾値を超えてしまっていたようで.だからここに立ってるのも別に強い意思あってのことじゃないというか,そういう刺激を加えられたら場所の方が足元にやってきたみたいな,こういう現実になにも手触りも歯ごたえも感じない無機質なまなこの奥で反射してる光の粒でしかなくって,ああ光の粒,窓が,暮しの証が一面に広がっていて,断絶の象徴みたいな夜に呑まれないで,暗いということに対抗し続けていて…

 

一息にこれだけのことが頭を巡った.数分後に数十秒後に無防備なブヨブヨを撒き散らすことになるこの頭が.一応は混乱の機能を備えているらしいことに少し労わりの気持ちを持てた.ああ,お前も大変だな.自分の頭を労うなんて狂人じみてる.狂えたらよかったのに.

 

なにを以てまともさなんてのを未だおのれの中に認めてるのかはわからないが…いやでも仮に正気判定人なんてのがいたらそいつが真っ先に狂いそうだ.判定人,必要なもの.僕に必要だったかもしれないもの.生まれたくせに頑張らなかった罪をかぶせてくれるなら恭しくこうべを垂れよう.刑をもたらしてくれるなら,配られる食事をプレートにもらうかのように掲げて受け取ろう.そうして放り込まれる獄があるならそこでやっと安寧を得るのだ.果たさねばならぬ責務は向こうから勝手にやってくる.完全な受け身のままでそれを成せる.成し続けられる.

 

自発的にしようとしなくて済む.

 

悠長なことを,うわごとのようにブツブツ唇から零しながらいよいよ僕を守るものがなにもない空間に出る手前に来た.なるべく通例に則って,加えて在り来たりにしよう.靴を揃えよう.ここは玄関なのだから.

 

時間が経った.

 

最後の最後の最後に必要な仕上げは持ち合わせていなかった.持ち合わせていなかったからここにきたのにそれは最後に必要だった.

判じてくれる人は誰もいなかった.醜さを評定してくれる他者なんてどこにも.だって他者を内包することすらせずに生きてきたんだから.

 

終了しない法廷に立たされているかのように,僕はへりから一歩も踏み出せず朝日を浴びた.

 

(2015年5月に書かれたもの)

http://sokkyo-shosetsu.com/novel.php?id=311667

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